2004年01月22日(木)  学歴詐称
 民主党の古賀潤一郎議員が卒業してもいないのに、ペパーダイン大学を卒業した、と自らのプロフィールに書いていたのが、経歴の詐称に当たるのではないか、というニュースが政界のトップニュースになってしまっている。

 個人的にはそういうスキャンダラスなものよりも、パート労働の厚生年金制度適用の見送りの方が中長期的に見て問題ないのかとかなりの程度思っているわけだが、学歴詐称についてもやはり一言述べておかないと気がすまない。

 というのも、古賀氏が詐称したとされるのがアメリカの大学であり、WOGも少なからずアメリカに留学をした経験があるからだ。

 今までの報道を総合すると、ペパーダイン大学の見解としては、古賀氏は確かに4年間在籍してはいたが、必要単位数が足りないために学位を授与されてはいない、との話である。

 元留学生として、まずその「必要単位数が足りないために授与されていない」というものに驚いてしまった。

 というのも、アメリカ合州国で生活をする留学生にはFビザという種類のビザが発行され、大抵の場合、留学生は大学側が必要としている単位数よりも遥かに多く単位を履修しないといけないような設定になっている。

 例えば古賀氏のように学部課程に留学している場合、現行のFビザの規定では毎セメスター12単位以上履修しなければならず、更に、その履修した全ての科目の平均成績がB以上でなくてはならないのだ。
 これは、大抵のアメリカ人の大学生よりも多い授業数であり、この単位数に不足した場合、もしくは平均成績がB以下となった場合、大学側が特別な救済措置を取らなければ容赦なく国外退去になってしまうのだ。
 そして、その特別な救済措置も大抵の場合1回もしくは2回ほどであり、それを除いたとしても、十分卒業に必要な単位数はFビザ規定を遵守するだけでも足りるはずなのだ。

 勿論、コレは飽くまでも現行のFビザ規定の話であるから、15年以上前に留学している古賀氏の時代にはここまで厳しくはなかったのかもしれない。

 それよりも憤るべきは、もし古賀氏が詐称していたのが事実だった場合、それは日本からの留学生に対する侮辱としか思われない、という点である。

 確かに、日本の大学は殆どの場合「4年間在籍」という言葉と「卒業」という言葉は等価のものかもしれない。しかし、アメリカの大学において、「在籍した」というのと、「学位を得て卒業した」というのは、天と地との差ほどある。留学生として、いろいろな学習以外での困難に取り組みつつ、Fビザ規定により普通のアメリカ人学生よりも最低1.2倍ぐらいの学習量をこなしていかねばならず、更に卒業にも色々な規定や制約が課せられている中、学位を取得する、というのは本当に大変な作業なのだ。

 それをただ在籍しただけで「オレは卒業生だ」のような顔をされては、日本に少なからずいるペパーダインへ留学し、そして学位を取得して帰ってきた元留学生に対して、余りに失礼な話ではないだろうか。

 情報によれば、古賀氏は経歴の中にUCLAにも在籍していたと、自らのプロフィールにも載せているにもかかわらず、日本側のメディアからの問い合わせに対してUCLA側は在籍記録すらない、と返答を寄せている、という。

 もしかしたら彼はUCLAには授業を聴講しに行っただけなのではないのだろうか。学部レベルのマスプロ授業であれば、アメリカの大学でもこっそりもぐりこんで聴講してもあまり気付かれないから、もしかしたらそれを「在籍した」ことにして詐称しているのかもしれない。しかし、そんなんで在籍したことになるんだったら、私など早稲田大学や東京大学にも「在籍した」ことになる、と何故か胸を張って言えてしまえることになるのだが。

 古賀議員が「自分の目で確認したい」とまるで逃げるかのようにカリフォルニアに飛んだのも、私から見ればあまりに見え透いた言い逃れであるような気がしてならない。私はアメリカの大学で修士号を取得したが、正規に学位を得て卒業した場合、その後アメリカにいようがいまいが、学位記がちゃんとその本国に送られてくる。学位取得後、私は日本に帰ったが、学位記がpermanent addressに指定していた実家に送られてきた。もし、古賀議員が正規に学位を取得していたのが確実ならば、何もアメリカに行かずとも学位記をメディアに対して示せばそれで済む話ではないのだろうか。

 悲しいことに、日本での国会議員の学歴詐称事件はこれにはじまったことではなく、過去にも何回も起こってきて、そして殆どの場合詐称が事実であったと判明して終わっている。

 学歴だけがすべてではないと言いながら、結局は学歴を見る側は参照し、選ばれる側が体裁を繕おうと詐称するこの構造は、まるでブランドもののバッグや服に群がる消費者と、その消費者を騙そうとして見かけだけはそっくりの偽物を作ろうとする業者の関係を見ているようだ。勿論、一番悪いのは偽物を作る業者であろうが、ブランドだからと言って、その商品の中身や自分に合うかどうかも確かめないで闇雲に買いあさる消費者にも問題はあるのではないだろうか。


(追記)
 今、ルイ・ヴィトンの顧客層としては日本人が最も多いそうだ。その傾向はルイ・ヴィトンの本場ヨーロッパ地方でも顕著で、私がひやかしで訪れたフィレンツェの直営店には日本人かインド人の観光客の姿しかなかった。グッチの直営店に入ったときなど、「日本人専用スタッフ」と見られるイタリア人店員が流暢な日本語で話しかけてきたために、何だかすごく腹が立った自分は終始英語でしか返答をしなかったことが思い出される。


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