皇族の死

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 何だか最近生活編ばかりが更新されつつあるこの日記。はっきり言ってジャンルは不要だったんだろうか。まぁ、生活している時間が一番長いんだから仕方がないんだろう。

 皇太后の死はここアメリカではそれほど大々的に報道されていない。もしかしたら小渕元総理が倒れたときよりも扱いは小さいかも知れない。WOGはいかにも中毒患者らしく、この事実をインターネットで知った。因みにアサヒコムでは「ご逝去」となっていたが、日本古来の呼び方では皇太后の死は「崩御」と記す。これは天皇・太皇太后(平たく言えば天皇のおばあちゃん)・皇太后・皇后の死を表すときのみに使われる言葉で、その他の皇太子や皇太子妃、宮家の皇族には「薨去」を使う。「朕」が天皇のみが使うことを許された言葉と似たものがある。
 WOGの記憶に残っている皇太后の印象といったら、「いつも車椅子に乗って静かにたたずんでいるおばあさん」ぐらいしかない。実際、WOGが物心付くか付かないかの時期に皇太后は腰を痛めて車椅子の生活を余儀なくされてしまった。その前は結構御所の中では実力者で、生粋の宮家生まれの伝統を重んじる余り民間出身の美智子現皇后には「粉屋の娘」とかなり辛く当たったこともあったという。97歳という歳は本当に現代の長寿社会を表しているかのような数字だ。皇后在位も歴代最長だった。
 しかしながら、彼女に負けず劣らず長寿を全うした、いやしてしまった皇族が一人いる。平安時代の一条天皇の中宮、彰子がその人。たしか91歳ぐらいで死亡したようなことを覚えている。中宮彰子というと、どうしても藤原道長の摂関政治の最盛期の代名詞や、紫式部とからめて語られがちだが、彼女は若くして権力に後押しされた花盛りの人生を迎えた後はかなりひっそりと暮らしていたようである。彼女はその生涯の中で摂関政治の盛衰、院政、そして武家の台頭による数々の戦役を目の当たりにせざるを得なかった。その間に彼女の出身階層である公家はどんどんと発言力を失っていった。静かで目立たなくはあるが、彼女の境涯というのも、大正〜昭和初期のファシズムへの流れと第二次世界大戦、そして敗戦と復興、象徴天皇制の下での高度経済成長を生きてきた皇太后に匹敵するのではないだろうか。

 今回の報道で面白かったのは共産党の不破委員長のコメント「皇太后の逝去をお悔やみ申し上げます」だった。ただの弔辞としては陳腐極まりないであろうが、これを言った人物の肩書きをよく考えるとこの一言はとても印象深い。歴史的に言って日本共産党は天皇制に対しては批判的で、天皇を戦争責任と結びつけ、時には天皇制の不要をもほのめかすこともよく発言してきた。WOGが一番印象に残っているのは昭和天皇の崩御の時のコメントで、他の各党が「天皇陛下の崩御をお悔やみ申し上げます」と似たようなものであったなか、共産党だけは昭和天皇を「裕仁」と呼び捨てにし、あくまでも戦争責任は彼にあったという見解を発表した。
 その共産党が、今回に関しては「皇太后」という言葉を使い、「お悔やみ」を述べたのだ。これは大きな変化だと言っていい。共産党が公式見解として天皇制を認めていることの証左とも取れるからだ。
 これには今回の衆議院選挙に対する伏線も充分感じられる。共産党はこの5年間での議席数を確実に伸ばしてきている。これには「全党ドングリ状態」のマンネリの中で「ここしか政策をはっきり分かりやすいように打ち出してないから」という消去法的得票がかなり絡んできているのだ。議席数が伸びれば当然の如く発言力も増し、それによって現政権の枠組みにも影響を与えることができる。掲示板にも書いたがWOGは今回の衆議院選ではおそらく最も得票数を伸ばすのが民主党と共産党で、自民党は過半数割れを起こし、保守党や自由党は現状維持、と見ている。こういった動きの中で共産党は政権に参加する意欲を見せているのだ。あの、「なんでもノー」だった共産党が与党に、なんて20年ぐらい前だったら誰も予想していなかったのではなかろうか。
 その場合、共産党は連立の相手として第一に民主党を考えている。この左派連立は自民党にとって面白いわけは全くなく、森首相なぞはこの連立に関するコメントで「国体発言」をしたことはご存知の通りである(いい加減にこういう首相はやめさせろよてめーら)。
 今回の不破委員長の発言はこの連立を明らかに念頭に置いたものだ。天皇制についても天皇制反対から「現行の憲法下で定められた象徴天皇制」を認める立場に変えて、足並みを揃えようとしている。たったひとつの発言からいろいろなことが見えてくるのはとても面白い。
 さて、そんなWOGにとっての今一番の痛恨事は「在外投票が出来ない」ことでしょうか。いや、今からアトランタ行って登録してこればぎりぎり間に合うんでしょうが、1泊2日、ガス代宿泊代含めて$100超えてまで在外投票だけのためにアトランタに行くというのは身体的にも懐的にも余りにも辛すぎる(泣)。せっかく在外投票が最初の試みだというのに、指をくわえて結果待ちなのだ。おのれ衆議院、WOGが在外登録して投票できるようになる8月にはひっかからないように解散しおって・・・(恨)。

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