Windy City

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 ここシカゴはWindy Cityと呼ばれていて、風が強いことで有名だ。しかも冬は寒さが厳しい。つい3日前は気温が25度を超えていたというのに今は氷点下の世界。しかも風が冷たくて体感温度は絶対にそれ以下。風が冷たいのはどう考えてもミシガン湖の水のせいだ。同じようにミシガン湖沿いにあるミルウォーキーに行ったときもやっぱり風が強くて1日外をほっつき歩いていたらほっぺたがざらざらになってしまい、オロナイン軟膏のお世話になってしまった(苦笑)。因みにその時の気温は零下15度。「寒い」というより「痛い」の世界。
 さて、昨年は病気のためシカゴではなかなか観光することが出来なかったため、今回は最低限の観光はしてやろうと気張って美術館に行ってきた。「シカゴ美術館(Art Institute of Chicago)」と現代美術館である。現代美術(正確に言えば20世紀前半の芸術)が好きなWOGは日本にいるときもよく美術館や美術展に行っていたものだったが、こちらの値段に慣れると日本の美術展に高い金出して行くのがばからしくなってしまうのだ。しかも日本の美術展はちょっといい作品が来るといつ行っても混んでて、美術作品を見に行ってるのか人混みの中にもまれに行っているのかわからなくなる。こちらでは人などあまり気にすることなくゆっくりと作品を見られる。おかげでWOGはアメリカに住んでいるときや旅行したときにまとめて美術展を見に行くというへんな習慣が出来てしまった。だって安いんだもん。
 一番安く芸術作品が拝めるのはなんといってもニューヨーク。MoMAとかなんてあれだけのすごい作品がぼんぼん展示されてるのに学生は$5弱。日本にあれだけのものが全部来たら入場料\2500位とられたりして。グッゲンハイムはちょっと高めだけれども、あれは建築がなんといってもフランク・ロイド・ライトなのでそこに入るだけで建築という名の一種の芸術の中にに棲息してる気分を味わえるのでよい。それだって$10もしない。
 今回はシカゴでは印象派展をやっていたのも放り出して東アジアの展示をじっくり見てしまった。日本の菩薩像や石刷りの絵などがかなり多く並べられている。これだけのものをよく集めたなぁと思ったら出資はどうやら三菱らしかった(苦笑)。その他有田焼や九谷焼もあり、中国の唐三彩や朝鮮半島の高麗青磁なども展示されていたが、WOGは高麗青磁の見事さにちょっと感激してしまった。名前の通り淡い青灰白色の壺や花瓶などなのだが、色彩の多さで美を表現するのではなく、色はひとつだけでも、薄く入れた模様や微妙な釉薬の加減で強弱を表現していくのだ。手法としては水墨画にも似たものを感じる。母が少しばかり素人陶芸をやっていたので教えてもらったのだが、焼き物というのは色の塗り方だけでなく、釉薬のかけ方や火の加減が微妙に違っただけでできあがってくるものに雲泥の差があるんだそうだ。高麗青磁の職人はそうしたノウハウを時間をかけて経験に刷り込ませながら熟練していったのだろう。機械生産で大量画一化された現代でこういう職人仕事を見るのは格別の思いがある。
 東アジアといえば、アメリカでは「菩薩」は「bosatsu」と言ったようにその国の読みをそのまま表記してあるので、何が困るって、中国の作品がどういうものかがいまいちピンとこないことだ。王朝名をHanとか書かれても「漢」のことだとはいきなりは判らない。最近の歴史ではそう習っているのかもしれないが、「前漢」と「後漢」を西と東で分けられていてちょっと戸惑った。一番判らなかったのは「殷」のShang。どうやったら「殷」という文字がそう読めるんだかがWOGには理解不能。
 しかしこういう状況は西洋文化に属する人にとっては面白いものに映るらしい。日本などは漢字を適当に並べて中国の人達と筆談が出来る。話し言葉は違っても書くことによって意志疎通を図ることは表音文字である西洋の言語ではあまり出来ないことだからだ。まぁそれでも日本語国民からすれば西洋の言葉はラテン語という底で共通しているから、スパニッシュの人が日本語を話す我々より英語を学びやすいことは明らか。そういうときはヒスパニック系の人が本当に羨ましくなる。まぁ、逆に日本の人は中国語やハングルを学びやすいという利点もあるにはあるのだが・・・。

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