図書館の貸出物

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 今日は明後日の授業のために図書館まで行ってリザーブされてる本をコピーしに行った。はっきり言って読める分量じゃありませんが、まぁとりあえずコピーだけはしておいた、と。図書館に来たついでにCDを借りる。っつったって、皆さんが聴くようなCDではなくバリバリのクラシック音楽とセミクラシックの吹奏楽のみしか置いてないので悪しからず。
 まぁとりあえずタダで聴けるんだからとWOGはちょくちょく借りてる訳なんだが、コレクションの仕方がかなり変。あって然るべきモノ(例えばベートーヴェンのシンフォニーやピアノソナタ)が全部揃ってなかったりするくせに日本語が書いてあるやたら妙な吹奏楽モノが充実していたり。何なんだか。
 本日は頭の中でショパンのピアノコンチェルト2番が鳴っていたので借りようかなぁと思ったのだが、何故か途中から頭の中でプロコフィエフのピアノコンチェルト3番が鳴り出して仕方なかったので衝動に負けてヴァン・クライバーン演奏のプロコ、それからルービンシュタイン演奏のショパンのポロネーズ全集を借りた。
 WOGが大学時代「ピアノの会」というサークルに入っていたことはここでは余り知られていない事実であるが、大学時代は勉強もせずにピアノ曲を聴き、自分で練習に打ち込んでばかりの日々だった。お陰で今の自堕落極まりない自分が存在する訳だ。情けない。で、練習した割には全然上手くなってなかったというのが事実。周りがあまりに素晴らしいピアノ弾きばかりだったのでWOGはいつも引け目を感じてしか弾くことができず、結局大学卒業と同じぐらいにピアノ中毒患者はやめてしまった。現在は暇を見てはピアノを弾くようにしているが、最近は寒いし眠いし、どうも足がピアノに向かない。しかも冬場は指先があかぎれだらけになってしまうのでちょっと油断すると鍵盤が血だらけになってしまう。こうなると指先のひび割れを治すのに2日は痛みを我慢しなければいけないのだ。こまった体である。
 さて、聞いた感想。ヴァン・クライバーン。ヘボい。クライバーンのファンには悪いがプロコ向きのピアノじゃないような気がする。3番コンチェルトはスピードが命と考えるWOGにとって、彼の一音一音を大切にする引き方は、聴いててもどかしくなる。まるでトレンディドラマをNHK教育の日本語会話のような調子でやられてしまった感じ。やっぱりこの曲の最高の弾き手はアルゲリッチだと思う。彼女の燃え燃えのピアノはなんちゅうか、ラテンの血を騒がせるものがある。同様にプロコだと7番ソナタもアルゲリッチは非常に名演。特に第3楽章は聴いていると野獣派の絵がありありと浮かんでくるようなのだ。
 あまりに失望してしまったために口直しにルービンシュタインを聴く。救われた感じ。ポーランド出身なだけにやはり彼のショパンは独特のリズムをよくつかんでいる。というか、あのアーティキュレーションは誰にも真似できないだろう。少し前、WOGはルービンシュタイン演奏のリストのソナタを借りたのだが、最初はそのあまりのノリの悪さにちょっとがっかりしたのだが、曲が進むにつれ、音が凄みを帯び、雄弁かつしなやかなルービンシュタイン節が目の前で展開する様にすっかり興奮してしまった。
 リストのソナタに関しては何といってもホロヴィッツの演奏を抜きにしては語れないだろう。いつだか、先述したアルゲリッチが「いろんなピアニストのリストソナタを聴いて誰だか当てる実験をさせられたのだけど、私はどれだけ聴いてもホロヴィッツしか当てられなかったわ。自分の演奏もその中に入っていたのにね」とインタビューに答えていたが、それほどホロヴィッツの演奏は特異だ。といえば響きがいいが、はっきり言ってお笑い系だ。1960年代までに全盛期だったピアニストにはビルトゥオーゾ型と呼ばれる派手で曲を自分なりに作り替えてしまったり、装飾を付け加えたりする人がよくいたが、ホロヴィッツはビルトゥオーゾ型の最後のピアニスト。彼のラフマニノフのピアノソナタ2番など、原曲の楽譜を見ながら聴くと「・・・どこまで変えるかこの人」といいたくなってしまうほどの手を加えようだ。まぁ、この曲に関してはホロヴィッツは作曲者直々に「このように変えて演奏してもよい」というお墨付きをちゃんと貰っているのだが。
 あるピアニストが「ルービンシュタインとホロヴィッツ、2人とも全然タイプは違うのだけれど両方に自分は色気を感じる」と答えていたことがあった。ホロヴィッツは売笑婦の色気であり、ルービンシュタインはその辺にいる女の色気とWOGは考えている。その辺にいる女というといかにも陳腐で下等に聞こえてしまうが、そうではない。ずっと一緒にいたり、見知った仲であったりする人が、突然ふっとものすごく魅力的に感じる瞬間というのを感じたことがないだろうか。ふっと遠くを見る視線や静かにたたずむ横顔、また、思いがけない素敵な笑顔。魅力を感じ取ってしまった側は「こんなに見知った人に惹かれてしまうなんて」とつい自分自身に戸惑ってしまうような、そんな感情をルービンシュタインのピアノはひきだしてくれるのだ。
 グールドに関しては色気というより、アナザーワールドに引き込まれてしまうような感を抱いているWOGだが、これについて語るとマジで宿題が出来ないので後日にまわそう。ピアノ音楽は、たまに聴くととても頭の体操になってよい。

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